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2020/08/27 01:18

今回は真面目に、タイイング スレッドについて書き進めたいと思っています。
思っているだけで、またまた、いつものように脱線する可能性大ではありますが、その際は、どうかご容赦を。

フライをご自分で巻かれない方もおられますので、タイイングスレッドの話題にご興味の無い方は、スルーしていただいて結構です。羽や獣毛をフックに括り付ける、ただの糸の話ですので。

タイイングに不可欠、と言うよりは、フライ・タイイングの中でも最も重要なマテリアルと云った方が適当かと思います。
おそらく多くの皆さんは、フライサイズや、パターンによって、メーカーや、太さ、材質、繊維構造を使い分けていると思います。カラーは勿論でしょうけど。それで、今日、書き進めたいのは、このスレッドの太さと強度(破断強度)についてです。誰もが共通して望む品質性能の筆頭は、「 強力で切れない(切れにくい)もの」だろうと思います。バランス良く、美しく巻き上げられたフライは、スレッドに強いテンションを掛けながら巻かれた物と断言して良いと思います。当然、数匹釣ったくらいでは壊れません。ドライフライであれば、ぐちゃぐちゃになった使い古しでも、水洗いして、蒸気を当てることで、使用前のシルエットに戻るほどです。

現在は、各メーカーから、太さ、材質、強度、構造、性質等、様々なものが発売されていますので、ご自分の目的にあったものを選択して使うことが重要かと思います。また、タイヤーによって嗜好がありますので、一概に、どれが一番良いとは言い切れない面もあります。ちなみに、僕の場合ですが、ソルト系の大きなものを除いて、殆どを75デニール、#8/0相当の、フラットタイプの物を使用しています。イントゥルーダーやダーティーホゥのスイング系パターンも例外ではありません。「フラットタイプ」と書いてしまいましたので、最初に、構造を説明しないと駄目ですね。
タイイングスレッドの構造には、大きく分けて3種類あります。ヨリを入れて1本のラウンド糸にしたもの、ヨリを入れずに繊維の束のフラット糸、そして、モノフィラメント系です。
僕がフラット系スレッドを好む理由は、フラットで滑らかに巻くことも、ヨリを入れて、ピンスポット的により細く、より強いテンションを掛けることも出来るからで、タイイングの最中は、絶えずボビンの回転を気にしながら巻いています。意図しないヨリを避けるために、バイスにはボビンレストが必須です。バイスのメインシャフトから水平に伸びたボビンレストの高さまでボビンホルダーを下げて、意図しない回転を防いでいます。また、スレッドをニードルで割って、そこにCDCやらダビング材を挟み込んで、ダビングループ的な使い方も可能です。

エキスパート、職業タイヤーの皆さんは、自分が使っている、それぞれのスレッドの限界強度を経験的に知っています。どれほどの力で絞めると破断してしまうかということです。ですから、破断しないギリギリのテンションで巻き上げることが可能なわけです。強度が高いと、スッキリと綺麗に巻き上がるだけでは無く、スレッド回転数を減らすことも出来ますので、作業効率の面でも、フライ重量(ドライフライでは特に大切です)の面でもメリットが大きくなります。スレッドの材質が同一であれば、当然、太いものが切れにくいのですが、フックサイズとの関係もありますので、数種類の太さを使い分けるのが一般的かと思います。(上述のような嗜好の問題もありますが)

スレッドの太さは、ご存知のように、ユニやダンビルのように、#6/0 とか、#8/0、#16/0 のような分数みたいな表記(以降、分数表記 )をするメーカーと、70デニール、100、140デニールのようにデニールと言う単位で表記するメーカーがあります。前者と後者は、何が違って、どのような関係性があるのか?と疑問に思われている方もいらっしゃるでしょう。
実は、この「分数表記」と「デニール」には、全く関連性がありません。全く無いと言うと、語弊があるかもしれませんが、分数表記は、それぞれのメーカー独自基準で、標準化された太さの単位ではないのです。フライフックがメーカー毎にサイズが違うのと似ています。UNIの#6/0とダンビルの#6/0は、太さが違います。同一メーカーのスレッドを使っている場合は、大きな混乱は発生しませんが、複数メーカーや、新たに、違うメーカーのスレッドを購入されるときは、注意が必要です。
一方、デニール(denier, 記号:D)は、繊維や化学業界で、規定、基準化された立派な世界共通の単位です。メーカーが違っても、70Dの物は、全て70Dなわけですが、これがまた、困ったことに、太さの単位では無く、重さの単位なのです。糸(繊維)の9000m分の重さが何グラムかを表しています。( ナゼ、9000mなのか不思議です。どうせなら、切りの良い10000mの方がスッキリするのですが...) 100Dであれば、9000mの長さの糸の重量が100gと言う意味です。 繰り返しになりますが、分数表記は、メーカー独自基準の太さを意味し、デニールは、9000m当りの重量(g)を表しています。と、云うことで、太さ情報がとても重要なことでありながらも、ユニバーサルに太さを表現するルールー?表記手法?が、存在していないのが、タイイングスレッドの世界です。

しかし、
デニール(denier, 記号:D) は、規定長さ当りの重量単位ですので、材質が同一であれば、数値が小さいほど、糸の断面積(太さ)が小さいことになります。メーカーが違っていても、材質、デニール値が同じであれば、基本的には同じ太さと考えることが出来ます。現在市販されているスレッドの材質は、強度アップや、用途別に、さまざまなものが存在しています。
ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリパラフェニレン テレフタルアミドが、メジャーなところです。もっとも多くの方が使われているであろうUNIスレッドは、ポリエステル素材、ダンビル社は基本的にナイロン素材です。高強度スレッドを歌い文句にしている商品には、ポリプロピレン素材やポリパラフェニレン テレフタルアミドが採用されています。
材質の物理的強度を順番に並べますと、
ナイロン素材ポリエステル素材ポリプロピレン素材ポリパラフェニレン テレフタルアミド素材になります。(モノフィラメント系はナイロン素材ですが、構造が違うため、ここでは除外します。)
ポリプロピレン素材のスレッドは、GSPと呼ばれることが一般的ですし、ポリパラフェニレン テレフタルアミドを商品名(商標)で言いますと、ケブラー繊維です。

分数表記とデニール表記、破断強度データが、公開されているUNIスレッドのそれぞれのデータを下記に添付します。
最もポピュラーな、ヨリが入ったラウンド糸のお馴染みの商品です。破断強度の( g )は、1オンス=28.35g として計算し、四捨五入しています。
同一素材ですので、デニール値と強度が比例しているかと思えば、一概にはそうではないようです。#6/0 と #8/0の間にだけ、その比例傾向が見られます。
ダンビル社フライマスター・スレッドの #6/0 は、79 D、強度 11 oz (312g) です。 素材(ポリエステルとナイロン)と構造(ラウンドとフラット)が違いますので、
単純比較出来ませんが、強度的には、UNI #8/0 よりも140gくらい弱いことになります。ヨリを入れて計測すれば、もしかしたら、ほぼ同等の強度になるのかもしれません。

上でも書きましたが、僕のスレッド嗜好は、細めで、出来るだけ強く、しなやかなで、フラットタイプが好みです。更に、わがままなことに、コストが安いこと(笑) 様々な種類の物を使って来た中で、自分のスタイルに最も合っているものとして出来上がったスレッド像です。全長7cm近いスイング系パターンも巻く僕にとっては、スレッドのコスパも非常に重要な要素です。職業タイヤーは、フックとスレッドだけは、常に予備のストックが必要です。「この週末の釣りに使いたいので...」と言う、ご要望は意外と多いのです。フックとスレッドが無くては、麺の在庫を持たないラーメン屋さんみたなものですので....  そんなことで、スレッドもある程度、まとめて購入して在庫の管理をしています。そしてスレッドの予備は、直射日光は勿論、保管中の劣化を防ぐために、黒塗りした遮光したケースに入れて保管しています。皆さんが想像するよりも、遥かに、経時劣化が進みやすいのです。特に、ナイロン系の物は要注意です。

僕にとって使いやすいものが、皆さんにとっても使い安いかどうかはわかりませんが、Anglefield Fly Supplies 自前ブランドのスレッド 2種類をリリースすることを検討しています。ひとつは、僕の標準、ポリエステル系の 75 D、強度 35 oz、フラット糸。もうひとつが、更に細くて、超高強度なGSP(ポリプロピレン系)フラット糸、50 D、強度は、40 oz。この50デニールは、TMCさんの #16/0 と
ほぼ同じくらい太さですが、UNI #3/0と同等の強度を持っています。素材のポリプロピレンGSPは、吸水性がゼロであることに加えて、比重が、0.9〜0.91で、化学繊維の中で最も軽く水に浮きます。化学薬剤耐性にも優れ、各種フロータントでも劣化し難い...  正に、ドライフライの為にあるようなスレッドです。評価テストも無事終了し、ファーストロットの入荷待って、WEBショップに掲載出来る予定です。

たかがスレッドですが、フライタイイングの作業性を大きく左右し、出来栄えにも関わる、大切なマテリアルです。各社が様々な商品をラインナップしていますので、ご自分に合ったスレッドを探してみることをオススメ致します。





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